[ 総括 ] 令和2年9月議会を振り返る
新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、島嶼県で多くの小規模離島を抱える本県は、医療関係者の懸命の努力により、医療崩壊を辛うじて防いでいるのが現状です。
また、観光に依存する県内経済は、国内外観光客の激減で観光業は深刻な状況にあり、その影響は産業全般へ波及し雇用環境の悪化、消費の低迷と、県経済そのものが影響を受けています。
そのため、コロナ感染の収束がない中、経済活動を両立させ、県民生活の安定を図らねばなりませんが、そのためには国の支援が必要です。
しかし、玉城県政は、依然辺野古移設問題で国との関係改善を図る考えはなく、コロナ禍で疲弊した県経済を立て直すため、国からの財政支援を求めるとの姿勢は見られません。
来る12月には、国の沖縄振興予算額等が決まります。
党本部や政府に対し要請活動を展開し満額確保に全力で取り組みます。
9月議会(代表質問)では、玉城知事の県政運営を具体的な事例を上げ追求しましたが、その中で次の3項目について説明します。
1:新型コロナウイルス感染症対策について
本県における新型コロナウイルス感染の第2波は、第1波の状況からは想像をはるかに超える勢いで、多くの公的な機関や民間施設等、広範囲に広がり、特に病院や介護施設、保育園、学校、飲食店などで、相次いでクラスターが発生し、医師や看護師、介護士の疲弊は極限に達し、島嶼県としての医療体制は限界を超えていたのであります。
まさに医療崩壊の危機的状況にあって、国や他県から保健・看護師や医療関係者等を派遣する支援で、医療崩壊は免れたのでありますが、依然感染の収束は見られず、警戒が必要であります。
今議会では、第2波で感染者が急増したのは何故か、第1波をどのように検証し反省したか、医療関係者への支援、経済社会活動をどう展開していくか、など、県の対応を質しました。
今回の感染状況を見ると、県には3~4月時を乗り切ったことで、気の緩みがあり、5月から7月までの2か月間、第2波に備えた対策・取組みが疎かになったと言わざるを得ないのであります。
新型コロナウイルスの感染は、完全に撲滅することは難しいと言うのが医療関係者や専門家の見解であり、今後も社会生活の中でコロナ感染症はあるとの前提で、国民生活、経済社会活動が必要であり、「withコロナ」の新たな生活様式が必要であります。
このため、全国的に感染が収まっていない中にあっても、「GOTOトラベル」を始めとする「GOTOキャンペーン」を推進し、経済の回復が必要となっています。
観光に依存する本県の経済は、限界に達しており、コロナ禍の中で、如何に感染防止を図りながら、観光客を受け入れて行くかが、重要であります。
県においては、ワクチンの確保、特に医療従事者や高齢者へのワクチン確保と、「withコロナ」時代の新たな生活様式の確立と経済との両立を図って行くことが求められています。
2:新たな沖縄振興計画の策定について
沖縄21世紀ビジョン基本計画は、令和4年(2022年)3月で期限が終了します。実に、国による沖縄振興計画は復帰後から10年単位で計画され、5次・50年、半世紀も続いてきたことになります。
しかし、県は、沖縄振興特別措置法が最終目標に掲げていた、「沖縄の自立的発展」と「沖縄の豊かな住民生活の実現」は、これまでの5次、50年の振興計画では達成されていないと総括し、さらに新たに10年間の振興計画が必要としております。
島嶼県で多くの小規模離島を抱える中で140万余の県民が生活し、観光以外に主力となる産業がなく、県民所得は全国最下位と言う現状にあっては、さらなる国による振興計画の延長・継続は不可欠であります。
新たな振興計画の策定には、その基本法である、沖縄振興特別措置法の延長が前提でありますが、問題は、50年も経過した中、復帰当初と現在は社会状況や経済状況も大きく変化しており、現状の沖縄振興特別措置法に掲げられた目的や根拠に変更はないか、国との調整が必要であると考えます。
わが会派の質問に対し、県は、現状のままの延長を求めるとしておりますが、安易すぎると考えます。
更に、県は、SDGsについて万国津梁会議の議論の結果を次期振興計画に反映させるとしていますが、SDGsのあり方で県と万国津梁会議の考えとは別の方向に向いており齟齬が生じているようであります。
そもそも、SDGsによる「誰一人取り残さない社会づくり」とは何か、その実現が新たな振興計画で可能なのか、単なる県の理想を掲げるだけのものとなるのか、判然としないのであります。
県には、国を説得し得る、万全な理論構成で理解が得られるよう、関係の改善が必要であろうと考えます。
3:那覇港湾施設(那覇軍港)の移設問題について
米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添ふ頭への移設問題については、浦添市が「南側案」を主張し、「北側案」を主張する県や那覇市と移設方法で対立していましたが、去る8月4日、沖縄防衛局が、「南側案」を選択肢から外すと県及び那覇市、浦添市に伝えたことで新たな展開を迎えています。
18日には、知事、那覇市長、浦添市長との三者会談で、松本浦添市長が、正式に「北側案」を受け入れると表明したことで、事実上「北側案」での移設で三者が一致した筈であります。
しかし、知事を支える県政与党からの不満が出ると、知事の発言は迷走をくりかえし、明らかに姿勢の後退が見られるようになっています。
以前の県議会でのわが会派の質問に対し、知事は、那覇軍港の施設は県経済の発展に資するなどの理由で「容認」すると明確に答弁していましたが、北側案が現実味を帯びた途端、今9月議会では、「容認」するとは言いながら、その後に「民港の整備が優先」と、逃げ道を付け加えています。
明らかに姿勢の後退です。知事の本音は、浦添市が「南側案」を主張し続け、県や那覇市の「北側案」と対立したままの塩漬け状態のまま推移することにあったのではないかとの指摘もあります。
今後は、国及び県、那覇市、浦添市で構成する「移設協議会」の場に議論が移りますが、知事には、自らの公言に基づき北側案で移設に向けた作業を加速させるべきであります。
「移設協議会」では、民港の港湾計画との整合性を図りつつ、早期に軍港の配置の技術的検討をしていくことが確認されており、民港の方向性を軍港よりも優先されると言った合意はなされてはおりません。
その際、那覇軍港移設と辺野古移設に対する対応の矛盾を聞かれたことについて、「那覇軍港は浦添港湾区域内への移設であるから、移設先の浦添港湾内の埋め立ても問題ない」とし、容認を明確にしています。
その姿勢は、玉城知事も県議会で明確に示しています。
このように、同じ埋立てによる移設でありながら、辺野古移設には反対し、那覇軍港の移設は認めると言う、まさに相反する姿勢を、知事の支持者からの反発や批判を受けながらも幾度となく示しながら、那覇軍港の移設が現実味を帯びると姿勢を後退させる玉城知事は、到底140万余県民の代表とは言えないのであります。