議会活動報告

[ 賛成討論 ] 自衛隊及び隊員とその家族等に対する差別的発言の防止に関する決議 / 新垣淑豊

令和8年7月13日(月)
令和8年第2回沖縄県議会6月定例会(最終日)

議員提出議案第1号「自衛隊及び隊員とその家族等に対する差別的発言の防止に関する決議」について、賛成の立場として会派を代表して新垣淑豊議員が登壇しました。


以下全文

ただいま議題となりました、古賀千景(こが・ちかげ)参議院議員の自衛隊に関する発言に対する抗議決議案について、沖縄自民党・無所属の会を代表し、賛成の立場から討論を行います。

初めに、明確に申し上げます。本決議は、防衛政策に対する批判を封じるものでも、自衛隊の配備や運用に対する県民の意見表明を制限するものでもありません。国の防衛や自衛隊の在り方について、国民や議員がそれぞれの立場から批判し、議論することは、民主主義社会において当然に保障されるべきであります。

しかし、政策を批判することと、自衛官という職業を選んだ一人一人の人格や尊厳を傷つけることは、全く別の問題であります。

令和8年6月15日に開催された参議院決算委員会において、古賀千景参議院議員は、自衛隊への入隊について、「経済的に厳しい子どもたちが自衛隊に行く」、「豊かな子どもたちは自衛隊にはならない」との趣旨の発言を行いました。

ここで重く受け止めなければならないのは、この発言が、私的な集会や街頭演説、あるいはインターネット上の個人的な発信として行われたものではないということであります。

国権の最高機関である国会、その中でも、予算の執行や行政の在り方を検証する参議院決算委員会という、正式な審議の場で行われた発言であります。

国会の委員会における発言は、全国に中継・公開され、社会に大きな影響を与えます。
国民から選ばれた国会議員には、その影響力の大きさにふさわしい慎重さと責任が求められます。

自衛官を志す若者には、それぞれ異なる人生があり、それぞれの志があります。国を守りたい。災害や事故の現場で人の命を救いたい。地域社会に貢献したい。専門的な知識や技術を身につけたい。自らを鍛え、誇りを持てる仕事に就きたい。様々な思いと決意を持って、自衛隊の門をたたいています。

そうした若者の職業選択を、家庭の経済状況だけに結びつけて一括りにすることは、本人の意思や努力、使命感を軽んじるものであります。

また、現に厳しい任務に従事している自衛隊員、その家族、退職自衛官、そして将来、自衛官を目指そうとしている子どもたちに対する誤解や偏見を強めることになりかねません。特に、私たち沖縄県議会は、今回の問題を、遠い東京で起きた一国会議員の失言として片づけることはできません。

沖縄県は、多くの有人離島を抱える県であります。離島において、診療所では対応することができない重篤な患者が発生した際には、自衛隊や海上保安庁などの航空機による急患搬送が、県民の命をつないでいます。

沖縄県においては、離島市町村長からの要請を受けた県知事が、自衛隊や海上保安庁に急患空輸を要請する仕組みが整えられています。とりわけ、陸上自衛隊は、長年にわたり、離島からの急患搬送を通じて沖縄県民の命を支えてきました。夜間であっても、悪天候の中であっても、離島の患者を医療機関へ搬送し、命をつないできた隊員がいます。

その一件一件の搬送の先には、助けを待つ患者がおり、その無事を願う家族がいます。

沖縄県民にとって、自衛隊は、急患搬送、人命救助、災害対応、不発弾処理など、県民の生命と暮らしを現場で支えている存在であります。

同時に、沖縄県は、我が国の国境離島を抱える県でもあります。自衛隊員は、警戒監視や防衛の任務に就き、我が国の領土、領海、領空、そして島々に暮らす県民の生命と平穏な生活を守っています。その最前線で任務に就いている隊員を、経済的に厳しい家庭の子どもが選ぶ職業であるかのように語ることは、隊員一人一人が抱いている誇りと使命感を深く傷つけるものであります。

また、私たちは、沖縄における過去の自衛隊員への差別的な扱いについても、正面から向き合わなければなりません。本土復帰後間もない時期、那覇市では、成人を迎えた自衛隊員が、自衛隊員であるという理由によって、市が主催する成人式への出席を控えるよう求められ、後には出席を認められないという事態が起きました。

職業を理由として、人生の大切な節目を祝う公の場から若者を排除することは、一人の若者の人格と尊厳を踏みにじり、社会の一員として祝福される機会を奪う、極めて非人道的な扱いであります。私たちは、このような過去を、単なる昔の出来事として済ませてはなりません。

過去の過ちを認め、同じような差別を二度と繰り返さないことこそが、差別のない社会をつくる第一歩であります。

沖縄県議会は、令和7年10月8日、「自衛隊及び隊員とその家族に対する差別的な風潮を改め、県民に理解と協力を求める決議」を可決しています。

この決議は、防衛政策への批判や抗議、意見表明は尊重されるべきであるとした上で、自衛隊員であるという理由で社会参加の機会が奪われ、隊員や家族の尊厳が傷つけられることがあってはならないと明記しています。

さらに、過去に、自衛隊員であるという理由だけで、行政サービスの拒否、教育の場からの排除、地域行事や社会的な節目への参加を認めない行為があったことも、県議会として明確に認めています。

今回の発言を県議会が見過ごすのであれば、この決議との整合性が問われます。自衛隊員とその家族への差別的な風潮を改めると決議しながら、国会の正式な審議の場で行われた、職業への誤解や偏見を強めかねない発言に対して意思を示さないということでは、沖縄県議会として筋が通りません。

また、沖縄県には、「沖縄県差別のない社会づくり条例」があります。

この条例は、全ての人が個人として人格と個性を尊重され、その尊厳にふさわしい生活を保障される社会を目指しています。自衛官という職業を選んだ人々を、家庭の経済状況によって一括りにし、その仕事を選んだ背景にある志や努力を軽んじることは、不当な差別のない社会を目指すという条例の基本理念に照らしても、看過できないものであります。

古賀議員は、その後、発言を撤回し、謝罪しています。また、所属政党においても、厳重注意及び役職解任の措置が取られています。

しかし、参議院決算委員会という国会の正式な審議の場で、全国に向けて発せられた言葉の影響は、撤回すれば全て消えるものではありません。

自衛隊員やその家族が受けた不安や失望、そして自衛官という職業に対して社会に生じかねない誤解や偏見が、直ちに解消されるものでもありません。

公の場で誤解や偏見を招きかねない発言がなされた以上、公の場で丁寧に説明し、その影響を是正する責任があります。自衛隊員とその家族の名誉と尊厳を回復し、自衛隊に対する正しい理解を促すとともに、同様の発言を二度と繰り返さないための明確な対応を示すことが必要であります。

県内においても、石垣市議会、宜野湾市議会、名護市議会など、複数の市議会が既に抗議決議を可決しています。これは、特定の政党や防衛政策への賛否を超え、地域社会の一員である自衛隊員とその家族の尊厳を守る問題であることを示しています。

自衛隊の配備に賛成するか、反対するか。防衛政策をどのように評価するか。それぞれの立場が異なっていても、自衛隊員一人一人の人格と尊厳を守ることについては、全ての議員が共通認識を持つことができるはずであります。

政策は厳しく議論する。組織の活動は必要に応じて検証する。

しかし、そこで働く人々を、その職業や家庭の経済状況によって決めつけ、本人や家族の誇りを傷つけることは許さない。それが、民主主義社会における最低限の節度であります。

沖縄県民の命を、離島からの急患搬送によって救っているのも自衛隊であります。国境離島を抱える沖縄県と、そこに暮らす県民を守るため、昼夜を問わず任務に就いているのも自衛隊であります。

その隊員と家族の人格、名誉、尊厳を守ることは、沖縄県議会の責務であります。

本決議は、古賀議員個人を必要以上に攻撃するものではありません。

国会の正式な審議の場で行われた発言に対し、誠意ある説明と再発防止を求めるとともに、職業によって人を決めつけず、全ての人の人格と尊厳が守られる社会をつくるという、沖縄県議会の明確な意思を示すものであります。

よって、私は本抗議決議案に賛成し、議員各位の御賛同を求め、賛成討論といたします。


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